今回は、仙台市在住の編集者、ライターとして活躍する葛西淳子さんにアライフ世代におすすめのエッセイ本をご紹介いただきます。
葛西さんは市民活動やNPO分野で編集、企画、ライティング等で活躍。東北復興文庫の編集や河北新報夕刊志民の輪「とびらを開く」などで執筆活動を行っています。
ストイックではなく「楽でありたい」効率主義者という考え方
今の世の中には、たくさんの情報が溢れていますね。暮らし方にしても最近はやりのライフスタイルは丁寧な暮らし方だったり、片付けや断捨離といった少ない物で暮らす方法だったり……。いろいろ迷いの多いなか、自分らしさを見失わず軽やかに人生を謳歌するための、ものづきあい、ひとづきあい、ことづきあいについて綴ったエッセイ本をご紹介します。
著者は、『食堂かたつむり』『つるかめ助産院』『ツバキ文具店』などの作品で知られている小説家・小川糸さん。
小川糸さんは自身の生活スタイルを、「ストイックな生活主義者ではなく、〝楽でありたい”と願う効率主義者だ」といいます。
気に入っている服だけを手元に置く。ワンシーズンで着まわしている服は10着未満。素材にこだわり、夏は麻、冬はカシミア。ご飯は、農家から届いた米を自家用精米機で精米し、文化鍋で炊きおひつに移す。精米時にできる糠で、糠漬けを楽しみ、料理に使う調味料は、良質の材料を使った無添のものを揃えて使いこなす。
こう聞くと暮らしへのこだわりを感じるのですが、その一方では、食器洗いは食洗器にまかせ、床掃除を担うのは掃除ロボット。忙しい時の食事は、近所のお弁当屋さんをセカンドキッチンとして利用するなど、より効率的で楽な方法を選んでいるのが小気味よいところです。
楽に生きるために取り払うものと持つもの
「丁寧な暮らし」は人それぞれ。徹底的に自然素材にこだわりたい人、心のゆとりを第一に考えたい人、好きなものに囲まれて暮らしたい人……。こうでなければならないという先入観は取り払い、自分だけの「モノサシ」を持って、日々の生活を工夫することが自分らしく生きる秘訣なのかもしれません。
「40代になる頃から、人生の終わりを意識するようになりました。あっという間の人生ですから、思いっきり気持ちよく、幸せな日々を送りたいと思っています」という、小川糸さんの暮らしぶりに刺激を受けつつ、私流に暮らしの29条を掲げて暮らして見るのもいいかなと思っています。
『これだけで、幸せ』
―小川糸の少なく暮らす29か条ー
講談社(2015)
第1章 これだけで、幸せな「ものづきあい」12ヵ条
第2章 「五感」を喜ばせる7つの秘訣
第3章 シンプルで豊かなモンゴル 自由を愛するベルリン
第4章 好きな「こと」や「ひと」だけでいい
著者紹介
小川糸――おがわ・いと
2008年に発表した小説『食堂かたつむり』(現在ポプラ文庫に収録)が映画化され、ベストセラーに。同書は、2011年、イタリアのバンカレッラ賞、 2013年、フランスのウジェニー・ブラジエ小説賞をそれぞれ受賞した。 そのほかおもな著書に、『喋々喃々』『ファミリーツリー』『リボン』(ここまでポプラ文庫)、『にじいろガーデン』(集英社)、ドラマ化された『つるかめ助産院』(集英社文庫)があり、最新の長編小説では、『サーカスの夜に』(新潮社)などがある。
講談社HP
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