数珠は、お葬式やご法事、またお墓参りの仏事で手にする身近な仏具と認識されていらっしゃることでしょう。
しかし、それだけではありません。まず、数珠は厄除けのお守りにもなります。
数珠は普段から持ち歩くことで、仕事関係で突然の不幸があった時でも、数珠があればお通夜に平服のままで掛けつける場合でも失礼に当たりません。
そして常に数珠を持って仏様に手を合わせれば、煩悩が消滅し、功徳を得られるといわれています。
ただ、持ち方や作法がわからず戸惑った経験をなさった方もいらっしゃると思います。
今回は身近な仏具でありながら意外と知らない数珠についてお話させて頂きます。
数珠の起源・歴史
数珠の起源についてはさまざまな説がありますが、3500年以上前にできたバラモン教の経典に「連珠」という記述がありそれが「念珠」すなわち数珠の原型になったという説が有力です。またヒンドゥー教の信者も、祈りの回数を数える際に数珠を使う習慣があったとされて、この習慣を釈迦が仏教に取り入れ後に中国へ伝えられたとされています。
そして、「仏説モクケンシ経」には、お釈迦様が「国の乱れを始め、悪病を退散させるにはモクケンシの実を108繁いで仏の名を念ずればよい」と語ったことが説かれています。
モクケンシの実とは羽子板の羽根の球に用いられるムクロジの実のことです。
数珠が日本に入ってきたのは仏教伝来と同時期になります。数珠が文献にはじめて登場するのが天平19年(743年)の法隆寺の資材帳です。
正倉院には聖徳太子の愛用品とされる蜻蛉玉金剛子の数珠や聖武天皇の遺品である水晶と琥珀の数珠二連が現存しています。 そして数珠が僧侶以外の一般の人々にも親しまれるようになったのは鎌倉時代以降のことです。
数珠の功徳
数珠を持って仏様に手を合わせれば功徳が得られるとされています。それは数珠が仏様と心を通い合わせる法具であるからです。
また、数珠は持っているだけでも、厄除けや心の安定を得られると言われていることから、 数珠は功徳を授かるお守りでもあるのです。
本来の数珠は百八個の珠からつくられています。これは僧侶が修行の祭に、百八の煩悩を断ち切るということから、数珠には百八の煩悩を退散消滅させる功徳があると言われています。
百八と聞くと「除夜の鐘」の数と同じ?関係があるのでは?と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか? 関係が無い訳では無いようですね。これについてはまたの機会に書かせて頂きます。
通夜や葬儀では
通夜や葬儀に参列する際には数珠を持っていくのがマナーとされていますが、ご用意できなかったり、忘れたりした場合でも決してマナー違反ではありません。大切なのは故人の供養を願い、心を込めて手を合わせることなのです。
しかし、最近は数珠を持っていない方も多いようです。
数珠を持たずに通夜や葬儀に参列することは、仏様を鷲掴みにする行為と言われることもありますので、この機会にお求めになることをご検討されては如何でしょうか?
しかし、数珠は持っているが、通夜やご葬儀に参列した時、持ち方や作法がわからず戸惑う方もいらっしゃるかと思いますので、略式数珠の持ち方について少しお話させて頂きます。
斎場で席につくまでは数珠入れやふくさに入れてかばんにしまっておきます。男性の方はポケットにしまっても構いません。そして、着席したら左の手首にかけて持ちます。
読経中は数珠の輪の中に左手の4本の指を通し、数珠を親指で押さえて持ち、合わせた手を膝の上に置きます。
合掌の際は、数珠を持った左手に右手を添えるようにするか、両手にかけて手を合わせます。
合掌とは仏様を尊び、供養する気持ちを表す行為です。
仏様の世界である左手と、現世である右手を合わせることで、煩悩やけがれを清める意味があります。
焼香の際は、順番まで左手に持って待機します。焼香台に向かう際は房を下にして数珠を左手に持ちます。持ち方は数珠の輪の中に左手の4本の指を通し親指で数珠を押さえます。焼香後に数珠を持った左手に右手を添えるようにするか、両手にかけて手を合わせ合掌します。以上が略式数珠を使用する時の持ち方です。決して難しくはありませんので、覚えておくと戸惑うこともなく安心して故人の供養へ気持ちを向けることが出来ます。
数珠のマナー
数珠は男女兼用ではなく、それぞれの玉の大きさが異なります。
数珠の貸し借りはしないのが一般的なマナーですので、ぜひ自分用の数珠を準備するとよいでしょう。
また、葬儀時に数珠を椅子の上などに置いておくのはマナー違反ですので、できれば肌身離さず持っていましょう。
離席する際は、かばんやポケットにしまいましょう。
数珠の選び方
数珠をはじめてお求めになられる方は何を選んでいいのか迷われるかと思います。
選び方は、まず、「男性用」か「女性用」を選びます。そして「略式数珠」か「本式数珠」を選びます。
宗派を問わない方は略式数珠を選ぶと良いでしょう。
宗派のある方は各宗派専用の本式数珠を選ぶのが望ましいので、その場合はご自身の菩提寺の宗派の数珠を選びます。
ただ、本式数珠でなければならないということはありません。宗派があっても略式数珠を使用なさる方も多くお見受けします。
数珠は、素材・色・玉の大きさなど含めると種類も豊富です。永くご愛用して頂くためにも、お気に召した数珠を探してお求めなさると良いでしょう。
数珠のお手入れ
数珠をお使いになった後は、やわらかい布で優しく拭いてから保管しましょう。拭いた後は数珠を入れる専用の袋や、ご購入なさった時の箱に保管します。
気をつけたいのが数珠専用の袋での保管の場合です。雑に袋に入れてしまいますと、房の形が曲がり、癖がついてしまいますので丁寧に袋に仕舞うように心掛けましょう。
数珠をつないでいる紐は使用している間に摩擦などで切れやすくなることがあります。紐がきれると縁起が悪いのではないか?よくないことの前触れではないかと気になさるかもしれませんが、紐がきれたとしてもご安心ください。
仏用の数珠の珠の一つ一つは、悪縁を切ってくださったことの表れともいわれています。数珠の紐が切れても決して縁起が悪いわけではありません。
永くご愛用して頂くためにも、紐が切れた・房が取れた・珠を無くした場合は仏具店に相談なさるのが良いでしょう。
既に持っていらっしゃる方はこの機会にお手入れをしてみてはいかがでしょうか。
贈り物
誰かに数珠を贈ることは法縁を与え功徳を施すことになります。 大変素晴らしいことですので、就職祝いや成人のお祝いに幸せを願い数珠を贈ってみてはいかがでしょうか。