
時代の変化に伴って変わるものは税務の世界にも存在します。法律は変わっていなくても、「解釈」が変わることで相続税負担が大幅に増える可能性があります。「社長の土地に会社の建物」このようなワードに心当たりのある方は要チェックです。

佐藤 智春先生
みらいえ相続 相続専門税理士
専門分野:相続税・贈与税・所得税・事業承継・黒字解散

土地つぐ(とちつぐ)
「大切な土地を、確かな未来へ。」 相続された土地を守り、次世代へ繋ぐために現れた勇者。大きな包容力で相談者の心に寄り添い、土地にまつわる不安を解消してくれる、不動産相続の心強い味方。

「佐藤先生、最近『同族会社にタダで貸している土地』の相続税評価が厳しくなるって噂を聞いたのですが。」

「これまでは、社長の土地に、会社が建物を建てて、『土地の無償返還に関する届出書』を出さずに『使用貸借(タダ貸し)』にしていた場合、税務上は過去に借地権の贈与があったものとして扱われていました 。」

「『借地権があった』とされるなら、個人の土地評価は下がるんですよね?」

「そうなんです。」
これからの扱い:国税局の最新の方針では、「タダで貸しているなら、将来はタダで返してもらうのが当たり前。そこに法人の権利(借地権)なんて存在しない」という考え方に変わりました 。その結果、書類(無償返還届出)を出していなくても、「法人の権利がない更地(自用地)」と同じ扱いにされ、100%の価格(1億円)でフルに評価されることになります 。
これまでの扱い:これまでは、たとえタダ貸しであっても「昔、法人に借地権をタダであげた(受贈益があった)」とみなすルールでした 。そのため、個人の土地は「法人の権利(借地権)が乗っかっている分、価値が低い土地(貸宅地)」として、更地価格の4割程度(借地権割合60%の地域の場合、1億円の土地なら4,000万円)で安く評価されていました 。

「ええっ!『法人が借りているから安くなる』という理屈が通らなくなって、評価額が2.5倍に跳ね上がるってことですか!?」

「その通りです。評価額が6,000万円アップすれば、相続税額も激増します 。東京国税局の内部資料(令和7年6月)でも、届出なしの使用貸借は『自用地評価』とこっそり変更されています。」
なぜ急に扱いが変わったのか?

「通達や法律が変わったんですか?」

「いえ、法律の改正ではなく、国税局執筆の解説書の文言が、令和5年版の『貸宅地』から令和7年版で『自用地』へ、わずか3文字書き換えられただけなんです 。」

「たった3文字で数千万円の増税……。恐ろしすぎます。」

「根拠としては、平成18年の大阪高裁判決などが挙げられています。届出がないという形式的な理由だけで、実態のない借地権の負担を認めるのは相当ではない、という考え方ですね 。」
対策はあるのか?

「先生、評価が上がって困るなら、今から慌てて『無償で返しますという届出(無償返還届出)』を出せば解決ですか?」

「それが、そう単純ではないんです。今から動くなら、以下の点に注意して慎重に対策を練る必要があります。」
「昔のルール」と照らし合わせる:建物がいつ建ったのか、その時に「借地権の税金」を払った形跡があるかなどを徹底的に調べます。実は、過去に税金を払っていなくても、税務上は「法人のもの」として扱われてきた経緯があるからです。
あえて「地代」を払う形に変える:これまでの「タダ貸し」をやめて、適切な賃料を払う『賃貸借契約』に切り替える方法です。ただし、急に地代を払い始めると、税務署から「今まで放置していた借地権を、今この瞬間にプレゼント(贈与)したな?」と疑われるリスクもゼロではありません。

「昔の東京では、親子のタダ貸しでも『借地権をプレゼントした』とみなして税金を取っていた時代があるんですよね?」

「その通りです。昭和22年〜33年頃の東京国税局など、地域や時代によってルールがバラバラだった歴史があります。こうした『過去の経緯』と『最新の厳しい方針』の両方を考えながら、出口戦略を立てないといけません。まずは、今の状態で相続が起きたらどうなるか、シミュレーションすることから始めましょう!」
まとめ
- 評価額の劇的な上昇:これまでは「貸宅地」として評価されていた土地が、今後は「自用地」として100%評価(例:1億円)されることになり、相続税負担が大幅に増える可能性があります 。
- 「無償返還届出」がないケースが対象:個人所有の土地に法人が建物を建て、届出を出さずにタダ(または固定資産税実費程度)で貸している場合が該当します 。
- 実質重視へのシフト:解説書の3文字の修正や判例に基づき、「実質的に使用貸借なら借地権はない」とする方針に変わりました 。
- 「課税漏れ」扱いの終了:たとえ過去に借地権贈与があり、時効で課税されなかったとしても、届出がなければ「借地権なし(自用地)」として扱われる方向に転換しています 。
- 株価への影響:法人の資産から借地権が消える(または評価が変わる)ため、自社の株式評価額にも変動が生じます 。

「たった3文字の修正で相続税が爆増するなんて、税務の世界は本当に油断できませんね!」

「法律が変わらなくても評価の『解釈』が変われば結果は激変します。まずは現状把握から始めましょう。」
「うちの土地はどう評価されるのだろう?」「昔の契約のままで大丈夫かな?」と不安に思われた方は、ぜひ一度みらいえ相続グループへご相談ください。複雑な借地権の判定や、将来を見据えた最適な対策を専門家の視点からアドバイスさせていただきます。次回も相続について学びます。お楽しみに!
「大変、何か対策を…」そう気づいたなら、まずはプロと一緒にシュミレーションしてみましょう。複雑な借地権の判定には専門家の力が必要です。
