「聞こえにくさ」をそのままにしないで~難聴と認知症の深い関係~

年齢を重ねるにつれて「テレビの音量が以前より大きくなった」「家族の会話を聞き返すことが増えた」と感じることはありませんか?

こうした聞こえの変化は多くの方にとって身近なものであり、「年のせいだから仕方がない」と受け止められがちです。

しかし近年、この難聴と認知症の関係が注目されています。

例えば、家族団らんの場で会話が聞き取りづらく、「何の話をしているのかわからない」と感じることが増えると、次第に会話に入るのがおっくうになります。

何度も聞き返すことに気を遣い「黙っている方が楽だ」と感じる方も少なくありません。そしてこうした状態が続くと、人との関わりが減り、脳への刺激も自然と少なくなってしまいます。

脳は、会話を聞き、理解し、考え、反応することで活発に働きます。ところが、聞こえにくい状態のまま生活していると、会話を理解するだけで多くの力を使い、記憶したり判断したりする余裕が減ってしまうといわれています。

この状態が長く続くことで、認知機能の低下につながる可能性があると考えられています。また、難聴は外出の機会にも影響します。

地域の集まりや趣味の集まりに参加しても、周囲の声が聞き取りにくいと、「会話についていけない」「居心地が悪い」と感じ、次第に足が遠のいてしまうことがあります。

人と接する機会が減り、生活の変化が少なくなることも、認知症のリスクと関係しているとされています。

難聴とMCI(軽度認知障害)の関係

今年の研究では、難聴があることでMCIを発症しやすくなる、またMCIが進行しやすくなる可能性が指摘されています。

聞こえにくさによって会話や外出の機会が減ると、脳への刺激が少なくなり、物忘れなどの症状が目立ちやすくなるからです。

例えば、「聞き取れなかっただけなのに、内容が分からず記憶できない」「会話についていけず、話す機会が減った」という状態が続くと「最近、物忘れが増えた」と感じることがあります。

これは、単なる記憶力の問題ではなく、聞こえの問題が影響している場合も少なくありません。

ご家族にできる大切なサポート

聞こえにくさは、ご本人の問題だけではありません。実は、最初に変化に気づくのはご家族であることが多いものです。

「テレビの音が大きい」「呼びかけに気づかない」「会話がかみ合わない」といった小さな変化は、聞こえのサインかも知れません。

「耳が遠くなったから補聴器を付けた方がいい」と直接指摘されると、ご本人が傷ついたり、意地になってしまったりすることもあります。

大切なのは、責めるのではなく、困っていることに寄り添う姿勢です。

「聞こえにくくて大変そうだね」「一度一緒に耳の検査に行ってみない?」といった声掛けは、ご本人が前向きに考えるきっかけになります。

ご家族との会話が増え、気持ちよくコミュニケーションが取れることは、脳にとっても良い刺激になります。

笑ったり、思い出話をしたりする時間は、何よりの認知症予防にもつながります。

これからの安心のために

終活というと、「人生の終わりの準備」という印象が持たれることが多いのですが、本来は「これからの生活を自分らしく、安心して過ごすための準備」です。

聞こえについて向き合うことも、その大切な一歩です。
「最近、少し聞こえにくいかもしれない」「会話が減ってきたかも」と感じたときは、体からのサインかもしれません。

早めに気づき、家族と一緒に向き合うことで、これからの暮らしは大きく変わります。

聞こえを整えることは、人の繋がりを守り、心の元気を保つことにつながります。

ご本人だけでなく、ご家族みんなが安心して過ごせる毎日のために、今できることから始めてみてはいかがでしょうか。

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