日本酒大好き!おたまでございます。新生活様式となる前の話になりますが…。秋の野営地で器違いの飲み比べをさせていただいた際、神様が降りてきました。酒器によってここまでお酒の味が変わることを知り、どうしても自分の手で作った鋳物のお猪口が欲しい!!!!!と、雪解けを待ち仙台より富山県まで行ってしまいましたw
1|錫の器
古来日本から生活に用いられていた「錫」は、毒素を持たない金属。酸化しにくく抗菌作用があるとされ、海外では、錫の合金「ピューター」でカラトリーなどの日用品やお守りなどに多く用いられています。また、錫の分子が小さく器に入れた不純物を吸着する・錫の器に入った水はバクテリアが繁殖しにくいともいわれ、イオンの作用で飲み物の角が取れて円やかに感じるともいわれていますし、錫の花瓶はお花を長持ちさせてくれるといわれています。現在では、日本の工房と国内外のメーカーのコラボ商品も開発され、より洗練された様々な錫製品を日常で愉しめるようにもなりました。
2|ちょっとだけ、観光
せっかくの富山。物産観光も楽しみたいところで、体験時間は午後に設定。一カ所で富山を満喫できる「氷見漁港場外市場 ひみ番屋街」へ行ってみました。広場には白テント!!近寄ってみると、そこには、名高い蔵元の日本酒がずら~~~り。開業5周年のスペシャルイベント「とやま特選酒尽くし」という催しが開催されていました。あちこちの蔵元さんもお越しになられ、富山のお水の事や仕込みの事など蔵ごとに色々伺うことができ大感激! 今や、全国区となった道の駅氷見のひみ番屋街。現在でもイベントが多数開催され多くの人でにぎわいます。お酒のイベントも多いので、また一度足を運んでみたい場所の一つとなりました。
3|いざ!鋳物体験
「錫」といえば、日本を代表する富山県の能作。東北の方でしたら鋳物の南部鉄器をご存じでしょう。鋳型に金属を流し込み鉄瓶やフライパン、急須などに加工する日本伝統の技法です。能作さんでも、同じ工程で鋳物製作を体験することができるのです。しかも製作できる種類も箸置き・小皿・小鉢…と豊富!様々な地域で体験できるところがありましたが、1名からでも受け付けていただけるということ・鋳型作りから打ち出し(金槌で模様を入れる)までの全工程を体験することができるということで、富山県富岡市の能作【NOUSAKU LAB】さんに予約を入れました。
チェックインを済ませて、材料の用意ができるまでカフェ&お土産フロアで小休憩。そこにはなんと!惜しげもなく能作錫タンブラーが積み重なる「水の飲み比べ」コーナーが。体験前に飲み比べができるなんて、作る器への想いも高まり、ワクワクが止まりません。
ラボスタッフから制作一連の手順の手ほどきを受け、まずは鋳型作りからスタート。
鋳型というのは、金型を木枠に入れ専用の土で固めながら、最終的にその形になるように空洞にしていく作業。
上下の型を作ってから一度分割して中の金型を取り出しますが、この時が一番ヒヤヒヤ。専用の土は、握るとその形を保持するくらいしっとりとしたものなので、上から力いっぱい固めてゆきます。押し方が弱いと、上下外した際に土が崩れてしまうので躊躇無用!叩きに叩きます!!
鋳型ができたら、いよいよ錫を流し込みます。錫が固まらないうちに注ぎ口から一気に流し込み、冷めるまであっという間の約5分。型から外したら不要な結合部分をカットし、全面やすりで磨きをかけていきます。おたまのお猪口の中は、鋳型の風合いそのままにして外側だけを磨くことに。実は… 一度鋳型作りを失敗し再チャレンジしていたため、時間も押し押しでその作業は撮っていませんでした(;^_^A ラボスタッフがおっしゃるには、お猪口難度は意外と高めで、失敗する方も若干いるそう。鋳型の作り方と流し込む勢いが最も重要ということで、作り直してよかったですね!とフォローいただきました。
そしてその晩は… 富山の地酒盆の風をガラスと錫での呑み比べをしながら、ホタルイカの黒づくりで一献!そして撃沈w あれから約10年… 各所の酒場で現役大活躍です。様々なお酒を錫杯で飲んでみたところ、甘口より中辛口(日本酒度±0)以上のお酒と相性がいいようです。が、信じるは自分の舌!!ん~ 違うなと思ったら、錫以外の器に戻していただけば、もとのお酒の味わいに戻すことができますのでご安心を。
4|まとめ
錫の金属硬度は、ほかの金属と比べると非常に柔らかく1.5mm前後までの厚さのものであれば手で曲げることも可能です。すずがみを知ったときは、こんなにもしなやかに曲がるんだ!!と他の金属にはない優しい質感に感動。リアルなものづくりを通して体験できたことは、一生の価値があるといっても過言ではない経験でした。
錫は熱伝導率がとても良いので、食材にはとても相性の良いものだと思います。熱のない食材に使う時には、冷蔵庫でさっと冷やしてから使うと食材との温度差がなくなり美味しさもより持続。
夏酒は冷え冷えをいただきたいですよね。おたまは、錫酒器で一杯飲み干したあと氷で器の内側をなぞりキンと冷やしてからまたお酒を注ぎます。冷やすといっても、そこは熱伝導率のいい錫。ゆっくりとなぞるだけで、す~っと氷の冷たさが器に移っていくのを手で感じ取ることができます。
今度は、あこがれのちろりを手に入れてみたいものです。
手入れも他の金属食器に比べて比較的楽なのも、そして1|で前述させていただいた特徴もいいですよね。私たちの食卓に一番身近な金属なのではないかと改めて思った、おたまでございました。
アクセス
◎テキストの注釈リンクは、Wikipedia・株式会社能作・氷見漁港場外市場 ひみ番屋街・syouryu有限会社シマタニ昇龍工房・福鶴酒造株式会社の公式サイトを参照としています。
◎施設利用の際には、公式サイトにて営業時間・定休日等ご確認の上ご利用下さい。