
節税対策の一つとして、養子縁組を活用する方法があります。ただ、様々な注意点もありますので、しっかり理解してから活用しましょう。

佐藤 智春先生
みらいえ相続 相続専門税理士
専門分野:相続税・贈与税・所得税・事業承継・黒字解散

金(かね)つぐ
資金運用の天才。相続専門の佐藤税理士の相続への熱意と、困っている人々を助けたいという想いから現れた相続勇者。相続の様々な側面を分かりやすく説明し、人々の不安を和らげていく相続勇者。

「養子縁組をすると相続に有利になるって聞いたけど、本当?活用するのに何か注意点はある?」

「養子縁組は、相続の場面で活用されることがよくあります。相続人の数が増えることで相続税の基礎控除額が増えたり、相続財産の分配を柔軟に行えたりするメリットがあります。しかし、一方で注意すべき法律や制限もあります。今日は、養子縁組と相続の関係について詳しくお話ししますね。」
養子縁組とその基本的な仕組み

「養子縁組ってどういう仕組み?」

「血縁関係にない人同士の間に法律上の親子関係を成立させる制度です。これによって、養子は実子と同じように相続人になる権利を得ます。」
(1) 普通養子縁組と特別養子縁組の違い
- 普通養子縁組:
- 養親と養子の間に法律上の親子関係を結ぶ。
- 実親との親子関係もそのまま残ります。養親と実親の両方と法律上の親子関係を持つことになります。
- 一般的に、相続で活用されるのはこの養子縁組です。
- 特別養子縁組:
- 実親との親子関係が完全に消滅し、養親のみが法律上の親となります。戸籍上も実の子と同じ扱いとなり、安定した家庭環境を築くことを目的としています。
- 主に未成年の子どもを対象とした制度で、実親が育てることができない子どもに、恒久的で安定した家庭を提供し、子どもの利益を図ることを目的とした制度です。
(2) 相続権の範囲
養子は、養親の第1順位の法定相続人となり、実子と同じ割合の法定相続分を持ちます。しかし、実親との関係が維持されるかどうかで、相続権の範囲が変わります。
- 普通養子縁組の場合:普通養子縁組では、実親との親子関係が存続します。
・養親の相続人: なれます。実子と同じ地位で養親の財産を相続します。
・実親の相続人: なれます。実親との親子関係が残っているため、実親の財産も相続できます。
・結論: 養子は養親と実親の両方から相続する「二重の相続権」を持ちます。 - 特別養子縁組の場合:特別養子縁組では、実親との親子関係が完全に終了します。
・養親の相続人: なれます。実子と同じ地位で養親の財産を相続します。
・実親の相続人: なれません。実親との法律上の親子関係がなくなるため、実親の財産を相続する権利を失います。
・結論: 養子は養親のみから相続する権利を持ちます。
(3) 養子縁組が相続に与える影響
養子縁組をすると、養子は法定相続人の一人になります。そのため、次のような影響があります。
- 基礎控除額・非課税枠の増加:養子が増えることで、以下の非課税枠が拡大します。
①相続税の基礎控除額の増加 3,000万円+600万円×法定相続人の人数
②生命保険金・死亡退職金の非課税枠の増加 600万円×法定相続人の人数
養子が増えると法定相続人の人数が増えるため、基礎控除額が大きくなります。
例:法定相続人が配偶者1人と子ども2人の場合 → 基礎控除額4,800万円
養子1人を加えた場合 → 基礎控除額5,400万円
- 遺産分割の柔軟化:
- 相続人が増えることで、遺産を分ける選択肢が広がります。
養子縁組を利用した相続税対策
(1) 基礎控除額の増加による節税効果
養子が増えることで基礎控除額が増えるため、相続税の対象となる課税遺産額を抑えることができます。
ケース例:遺産総額:8,000万円
- 相続人配偶者1人+子ども2人(基礎控除額:4,800万円)
→ 課税対象額:8,000万円 - 4,800万円 = 3,200万円 - 相続人配偶者1人+子ども2人+養子1人(基礎控除額:5,400万円)
→ 課税対象額:8,000万円 - 5,400万円 = 2,600万円
→ 基礎控除額が増えることで、課税対象額を600万円減らせる!
(2)生命保険の非課税枠の拡大
- 生命保険金には「500万円×法定相続人の人数」の非課税枠が適用されます。
ケース例:
・法定相続人が3人 → 500万円 × 3人 = 1,500万円の非課税枠
・養子1人を加えた場合 → 500万円 × 4人 = 2,000万円の非課税枠
養子縁組を行う際の注意点

「養子縁組にはメリットがあるようだけど、注意しないといけないことはある?」

「はい。養子縁組を行う際には、いくつかの注意点があります。特に相続税の節税目的だけで養子縁組を行う場合、トラブルや制限が生じる可能性があります。」
(1) 法定相続人の数に算入できる養子の制限
相続税法では、基礎控除や非課税枠を増やすために考慮できる養子の人数に制限があります。
- 実子がいる場合:養子は1人まで。
- 実子がいない場合:養子は2人まで。
※この人数を超えて養子縁組を行った場合、基礎控除や非課税枠の計算では考慮されません。
※重要ポイント: この制限は、相続税の計算上の人数に対するものです。実際に財産を相続する民法上の権利を持つ養子の数には、制限はありません。
(2) 他の相続人とのトラブル
養子が増えることで、他の相続人から「不公平だ」と感じられるケースがあります。
- 権利者の増加: 不動産などの共有財産について権利を主張する人が増えるため、意見の対立や利害の衝突が生じやすくなります。
- 実子の不満: 特に相続税対策のために養子縁組をした場合、実子(や他の親族)は「自分の取り分が減る」と不満を抱き、遺産分割協議が難航したり、最悪の場合訴訟に発展するケースが多く見られます。
- 共有名義のリスク: 相続人全員が納得できる分け方が見つからず、仕方なく不動産を共有名義にすると、将来の売却や利用(修繕など)の際に、共有者全員の同意が必要になり、権利関係が複雑化します。
(3) 養子縁組の実態の重要性
- 節税目的だけなど、真に親子関係を築く意思がない養子縁組は、家庭裁判所への請求によって取り消される(無効とされる)可能性があるため、注意が必要です。
- 養子縁組は、単なる財産権の移動や節税のためではなく、「親子という身分関係を創設する」ことが目的であり、真に家族としての関係を築くことが前提のためです。
養子縁組を行うべきか?判断のポイント
(1) 養子縁組が適しているケース
- 相続人が少なく、基礎控除額や非課税枠が十分でない場合。
- 特定の人に多くの財産を残したい場合。
(2) 養子縁組を慎重に検討すべきケース
- 節税目的がメインで、他の相続人が納得していない場合。
- 家庭内でトラブルの原因になりそうな場合。
- 養子となる人が未成年の場合 (家庭裁判所の許可と子の福祉)。
- 孫などを養子にする場合 (相続税の2割加算)

「養子縁組は節税対策として効果的だけど、節税目的だけで養子縁組をするのは危険なんだ。家族全員の同意が本当に大切なんだ。」

「そうですね。家族が納得しないと相続がスムーズに進まず、後々のトラブルに発展することが多いです。家族関係や将来の生活を考慮して判断することが大切です。」
まとめ
- 養子縁組のメリット:基礎控除額の増加、生命保険の非課税枠拡大。
- 注意点:
- 税法上の養子人数制限がある。
- 他の相続人とのトラブルが起きる可能性がある。
- 節税目的だけの養子縁組は取り消されることも。
- 判断のポイント:節税効果だけでなく、家族全員が納得できる形で計画を立てることが重要。

「養子縁組は節税対策として効果的だけど、節税目的だけで養子縁組をするのは危険なんだ。家族全員の同意が本当に大切なんだ。」

「はい、節税と円満な相続、どちらも実現するには“信頼関係”が何よりの土台になりますよ。」
本来、養子縁組は「親子という身分関係を創設する」目的が大前提の制度です。節税という言葉に惑わされることなく、家族間の理解や信頼関係にひびが入らないよう専門家に相談してきちんと見極めることが重要です。
それでは次回も相続について学びます。お楽しみに!
