不動産を相続すると様々な届出が必要になります。相続登記はよく知られていますが、それ以外にも必要になる場合がありますよ。
〈この記事で出てくる専門用語〉
【遺産分割協議】 亡くなった人の財産を、相続人みんなで話し合って分けること
【包括遺贈】自分の死後、残った財産を、あらかじめ決めておいた人に、財産の全てまたは一部を、割合で指定して分けてあげること
相続サポートセンター様のご紹介
佐藤 智春さん
仙台相続サポートセンター所長 相続専門税理士
専門分野相続税・贈与税・所得税・事業承継・黒字解散
管野さん
仙台相続サポートセンター新人スタッフ
「さて、今回から不動産を取得した場合の各種届出についてお話します。」
「不動産登記だけではないのですか?」
「そうです。あまり知られていないものもあり、相続手続きでも届出が漏れている方をお見かけすることがあります。」
各種届出
不動産を相続した際には、期間内に届出が必要なものがあります。
相続登記(所有権の移転登記)
相続登記とは、被相続人から相続した自宅、アパートなどの不動産の名義を相続人に変更する登記手続きをいいます。相続した相続財産の中に不動産が含まれている場合には、相続登記をする必要があります。
この相続登記は、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人の戸籍謄本、遺産分割協議書、印鑑証明書などの書類を整えたうえで、対象不動産の所在地を管轄する法務局に申請します。そのため、相続する不動産が複数の地域にある場合には、それぞれの不動産の所在地を管轄する法務局ごとに、相続登記を申請しなければなりません。
尚、2024年4月1日以降は相続登記が義務化され、相続で不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならなくなります。3年以内に登記を行わない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
農業委員会への届け出
農地(田、畑)を相続した時は、農地がある市町村の農業委員会に届出書を提出する必要があります。
■届出が必要な人
農地法の許可を必要とせず、農地の権利を取得した人
・遺産分割協議により農地を取得した人
・包括遺贈により農地を取得した人
・相続人として遺言で農地を取得した人
■届出の期間
取得したことを知った日から10か月以内
■届出方法
農業委員会の窓口へ届出書を提出してください。届出をしなかったり、又は虚偽の届出をしたりする者は、10万円以下の過料が科される可能性があります。
未登記建物届出
相続した建物が未登記家屋(登記されていない家屋)だった場合は、建物の所在する市町村役場に、未登記建物の所有者変更届出書を提出する必要があります。登記された家屋の所有者は法務局で管理していますが、登記されていない「未登記家屋」の所有者は市町村が管理しています。
売買・相続などで未登記家屋の所有者が変わった場合は、市町村へ忘れずにご提出ください。
■未登記建物を登記するには?
未登記建物を相続した場合、相続後に建物を登記することができます。 土地家屋調査士が建物を測量し、表題登記を行います(登記簿のハコのようなものです)。その後、司法書士が所有権保存登記を行います。
固定資産税の納税代表者の届出
土地・家屋の所有者が死亡した後、相続登記を行わない場合は、土地・家屋の固定資産税については、相続人全員が連帯して納税義務者となります。「相続人代表者指定届」は、相続人の中から代表して納付する方を届け出るものになります。届出後、翌年度から相続人代表者の方へ納税通知書が送付されてくるようになります。
※固定資産税の負担割合について、役所が関与することはありません。 ※相続が発生した年内に相続登記を済ませる場合、原則届出は不要です。
市町村への届け出
山林を相続したときは、山林がある市町村への事後届出が必要です。
■届出が必要な人
個人、法人を問わず、売買や相続等により森林の土地を新たに取得した方は、面積に関わらず届出をしなければなりません。ただし、国土利用計画法に基づく土地売買契約の届出を提出している方は対象外です。
■届出の対象となる土地
都道府県が策定する地域森林計画の対象となっている森林です。
対象になっているか否かは、山林が所在する都道府県か市町村の林務担当部局に問い合せることになります。
■届出の期間
取得の日から90日以内
(原則として相続開始の日から90日以内に遺産分割がされないと、共有物として届出が必要です)
■必要書類
相続登記後の登記事項証明書の写し
「登記されていない建物や農業委員会への届出などあるんですね。初めて聞きました。」
「知らない方が多く、相続の手続きの際に気づく方もたくさんいます。例えば、登記されていない建物であれば法務局で登記簿謄本を取得した際に記載がされていません。まずはご自身やご家族がお持ちの不動産について調べてみるのも良いかともいます。相続に関する手続きについて、どこに相談するかも含めてまずはお気軽に当社にご相談いただきたいです。」
農地や山林、不動産未登記建物が含まれている手続きはとても大変です。実際に相続手続きを進める中で初めて存在に気づく方もいるかもしれません。そんな時は迷わず専門家へ相談しましょう。