慌ただしい毎日に心を鎮めおだやかに過ごしたい方におすすめの趣味「写経」。空間と身を清めて行う写経には、瞑想と同じ効果があるとか。今回は写経の効果と始め方をご紹介いたします。
写経とは
写経とは、仏教の経典を1文字1文字丁寧に書き写すことです。
印刷技術がない時代に、お釈迦様の教えを広めるために経典を書き写したのがはじまりといわれています。日本には奈良時代に伝わり、僧侶の修行の一環として盛んに写経がおこなわれたといわれています。修行の一つとして、信仰・祈願・供養のために昔から写経されてきましたが、昨今では、静かに心を落ち着けて集中できることから、精神の安定を目的に、写経を行う方が増えてきています。
写経のメリット
精神が安定する
ひたすら写経に没頭することで、精神が集中し、怒りや妬みなどの邪念が払われ、「過去の後悔」と「将来の不安」から解放され、心が安定するといわれています。今ここにただ集中している心のあり方は、まさに「マインドフルネス」。世界的な企業も取り入れたことで、認知度が高まったマインドフルネスは主に瞑想を用いますが、写経も同様の効果があるといわれています。
脳が活性化する
写経は集中力を必要とするため、思考力や記憶力、コミュニケーション能力などを司る大脳の前頭前野が活性化すると考えられています。最近の研究によると、写経は認知症の予防や改善策として、写経は効果が高いことが分かっています。 オセロゲームやくるみにぎりなど、これまでにも高齢者の脳活性化に役立つとされてきた160種類の作業で効果を測定した結果、写経が最も脳の活性化したそうです。
幸福感が高まる
他者の幸せを祈りながら行う写経には幸福感を高める効果があるといわれています。
祈るという行為は、他人だけでなく、自分の心も満たしてくれるのだとか。病気を患っている友人に対して「病気が良くなりますように」と祈りながら写経すると、脳は自分がよい行いをしていると判断し、多幸感や快感をもたらすドーパミンやβエンドルフィン、オキシトシンなどの脳内物質が分泌されます。このような脳内の仕組みは「ヘルパーズ・ハイ」とも呼ばれており、人のために行う写経など人を助けようとする行為は、脳内の快感物質を生み出します。
姿勢が良くなる
写経を行う際に大切なのは姿勢です。写経は筆写を通して、仏さまと向き合う作業ですから、写経は正座して行っても、イスに腰掛けて行っても問題ありませんが、姿勢は何よりも大切です。背筋は伸ばし過ぎずに、上体を前傾させた自然な姿勢が写経には適しているようです。続けることで腹筋・背筋が少しずつ鍛えられ、姿勢を正すことで自然と姿勢が良くなっていきます。
写経の始め方
写経に必要な道具をご紹介いたします。
- 硯・墨・小筆・文鎮・下敷(経典には画数の多い漢字があるため、細めの筆を用意しましょう)
- お手本となる経本(般若心経のような短い経文から始めてみましょう)
- 写経用紙または半紙
初心者の方は、お手本を用紙の下に敷いて文字をなぞる「模写」という方法や薄く経文が印刷された写経用紙がおすすめです。
写経は整えられた清らかな室内で行うものです。仏画、経巻などの掛軸をかけ、灯明(ロウソク)、生花を供え、香を焚くことができればなお良いでしょう。
写経の仕方
1,浄水を硯に少量ひたし、静かに墨を磨ります。
2,正座して心を落ち着け、合掌して写経するお経を唱えます。
3,静かに筆をとり、表題から書き始めましょう。
4,写経中は清らかな心で、字を間違えたり曲ったりしないよう注意して丁寧に書きます。
5,本文から一行あけて、始めの一字をさげる日付を入れます。
6,終りに願い事があれば書き入れます。
次の行に「為」という文字を書き入れ、願いを記します。
7,名前を書いて、末尾に「謹写」と書す。(例)鈴木太郎 謹写
8,最後に合掌して『普回向(ふえこう)』を唱え写経を終える。
脱字があった際はその右側に点を打ち、行の末尾にその字を書きましょう。また、誤字の場合は、訂正して汚すことなくそのままに。写経する寺院や会場によって作法が異なることもありますが、心を落ち着けて取り組むことが大切です。
いかがでしたか。心が穏やかになるばかりではなく幸福感が高まる暮らしに取り入れてみてくださいね。