以前、宮城県北での仕事を担当していたおたまの母。自ら終活を進め、その一環で思い出の地栗原市へ連れて行ってほしいというリクエスト。母の行きたいところ巡りをドライブ気分で受けることにしたのですが…。間違えて訪問した場所で、ミラクルな再会と展開が待っていたのです。
1|風光明媚な国定公園 栗駒山
宮城・岩手・秋田の三県にまたがる標高1,626mの栗駒山は登山のメッカでもあり、鳴子峡同様、紅葉の名所。行った時期は、深緑が映える雨上がりの7月。深緑がトンネルのようにうっそうと生い茂り、木漏れ日射す道中の樹海ラインの美しさは、この季節に来た方だけが見ることのできる絶景。隧道ともいうべき古いトンネルが各所にあるのですが、トンネル内を照らす暗めのライトと相まって、その光景はまるでステンドグラスのようでした。登山口のいわかがみ平は、標高1,113m。いわかがみ平までの道中はお天気だったのですが、変わりやすい山の天気… 下界は雲に閉ざされてしまいました( ノД`)シクシク… 晴れていれば、山頂付近から見事な絶景も見ることができますし、紅葉シーズンになればいわかがみ平も満車となり、シャトルバスが運行されるという宮城有数の観光スポットが栗駒山なのです。
2|腹ごしらえタイム!逸品が揃う、山中のお食事処へ
車内で「肉と魚、どっちがいい?」と自慢げの母。肉も大好きな母ですが、恐らく「私よりもこの子が好きなものを」という親心だったのでしょう。山で魚!?そしていつでも食べれる!?と言ったら養殖イワナやヤマメだろうと魚をリクエスト。連れていかれたのは…ご存じの方も多いのではないでしょうか。耕英地区にある伊達いわなの養殖場の一つ「数又養魚場」さん。
伊達いわなは、宮城県を代表する県産食材ブランドの一つ。様々な取組を経て2014年に初出荷を迎えました。数又養魚場さんでは、食堂の敷地内にある生け簀で育てた新鮮な岩魚を提供。岩魚重・丼、塩焼定食をはじめ、岩魚田楽、塩焼、刺身などお品書きも豊富。一択では決めれず、頼めるだけ頼むという暴挙ぶりw。伊達いわなの特徴は、川魚の臭みがないとのことで、なるほど!納得の味わいでした。
●岩魚丼/1,100円
重と丼は量違いだそう。岩魚のかば焼き仕立てだったのですが、これは絶品!
あっさりとしていてふわふわの岩魚が癖になりそうな逸品でした。
●岩魚塩焼定食/1,300円
The塩焼!食べず嫌いなのですが天然物山の魚にはいささか抵抗あるおたま。
しかし養殖ともなれば話は別。しっかりと身が付いていて山魚なのに旨味を感じる事のできる逸品でした。
●岩魚の刺身/800円
捌きたてならではの、ムチムチ感!! しつこくない程よい良質な脂も乗りいつまでも食べていたい逸品。釣りも趣味とするおたまとしては、ちょっと寝かせて食べてみたい衝動にかられましたw
●岩魚の田楽(ふきのとう味噌)/600円
岩魚塩焼にばっけ味噌をかけた逸品。えぐみもなく香りもほんのり漂う上品なばっけ味噌※1がたっぷり。田楽定食を頼むと、塩焼とばっけ味噌を食べれる一粒で二度おいしい定食になります。
※1=ばっけとは、東北地方でふきのとうを指す方言です。
定食には、手づくりの小鉢がたくさん!ごはんが足りなくなってしまうので、そこは慎重に、バランスを考えていただきました。母子ともども、満腹ですww リピ確定!山中のお食事処です。
営業時間:11時~15時 定休日:不定休
電話:0228-46-2136
公式サイトはありませんが、紹介サイトはこちらから。
3|感動の再会、そして無形文化財との出逢い
お昼の後は、いよいよ最終目的地愛藍人・文字(あいらんど・もんじ)へ。栗駒探訪をするということで、事前に調べ知ったのですが、栗駒は藍染の地でもあったのです。この施設では、藍染体験もできるということで、50余年箪笥の肥やしとなっていた母から受け継いだ紬の反物をそこで染めてもらおうという無謀なプランを立てていました(;^_^A しかし、閉館時間は15時… すでに人影もなく、愛藍人・文字を後にすることになったのですが…。
車を公道へ出したところで、隣接したお宅の方と面識があり挨拶していきたいと母。看板を舐めるように読み返し… 此処こそが「宮城の藍染の聖地」だということが分かりました。反物をバッグに忍ばせ、御挨拶へ。迎えてくださったのは、3代目まつ江さんのご子息 正一さん。母との面識はありませんでしたが快く迎えてくださり、通されたのは藍染の工房。中には年季の入った藍染の樽や代々守り続けられている作品の数々。宮城県に、こんなにも素晴らしい伝統工芸品があるのかと圧倒されました。
無知は怖いものでもありますが、見地を広げるきっかけにもなります。宮城県無形文化財 正藍冷染/しょうあいひやしぞめは、栗駒市文字地区で千葉家代々受け継がれる伝統染色技法~日本最古の染色技法~とも呼ばれています。宮城県栗駒市の藍染の歴史は語るととても長くなりますので、栗駒市の公式サイト内広報くりはらを引用Vol.1(1-2)・Vol.2(P3-4)させていただきますので、ぜひご一読ください。ここで、おたまは千葉家の藍染にノックアウト!宮城県重要無形文化財 正藍冷染 千葉家の沼にドップリはまることになったのです。
4|宮城県重要無形文化財 正藍冷染とは
正藍冷染とは、その名のごとく「熱を加えることのない」染色技法。藍染の技法も様々あり、加熱しながら染色を行う工房もあれば、千葉家のように自然の力によって発酵を促す技法も。加熱であれば年中染は可能ではあるものの、千葉家の染ができる期間は藍建(あいだて)後に自然の力で発酵できる初夏から夏にかけてのごくわずかな期間。
春は藍の種まき、夏~秋は刈取りとねかし、冬は藍を寝かせて発酵させ、そして春を迎えると来年のための仕込みの種まきとその年の分に使う藍玉づくりを経て藍の発酵をさらに促すための藍建ての後、初夏にいよいよ染めの準備に取り掛かるそう。1年間365日、藍と対話をしながら作り上げられるものが「正藍冷染」。千葉家は、初代千葉あやのさんが国の重要無形文化財(人間国宝)・無形文化財認定を受けたのち、今では3代目まつ江さんがこれから4代目となる正一さんの作業を見守っているそうです。
昔話も終盤。「ちょっと、かましてくるから※2近寄らないでね。」と正一さんが中座。頭に頭巾をかぶり櫂をもって藍の入った樽へ向かわれました。「見える?この泡?? この泡(=藍の花)がなくなったら、うちの染めは終わり。今年は、ま~だ元気だねぇ」と桶の中に入った藍と会話をしているかのようにゆっくり櫂を動かしながら、状態を細かく教えてくださいました。頭巾は、藍の液にゴミが入らないようにするため。髪の毛が桶に入ってしまうと状態が変わり始めるとのことで、藍染をする期間は、毎日休みなくこの作業を一日一回夕方に慎重に行うのだそう。
※2=かましてくる は宮城の方言で「かき混ぜる」ということを指します。
5|まとめ
基本的に正藍冷染は、7月上旬~中旬には終わってしまうそう。今年はとりわけ藍の花のご機嫌がよいとはいえ、持込させていただいた時には日々一刻を争う状態。「じゃ今日のうち糊を取って、翌日染めるから」と染の加工を行っていただけることになりました。
証紙に関しては巷をにぎわせていますが… この反物自体も、母が知人からいただいたと言っており、出どころは確かではありませんm(__)m
<Vol.2につづく>
ご紹介一部店舗へのアクセス
いわかがみ平
数又養魚場
愛藍人文字(あいらんど もんじ)
※参照リンクは、Wikipedia、宮城県公式WEBサイト、栗原市観光ポータルサイトぎゅぎゅっとくりはら、栗原市役所を参照しています
※記載した店舗営業日時・情報は、変更になっている場合がございます。予めご了承ください。